【歴史の本】村田晃嗣『レーガン』|「最も偉大なアメリカ人」となった米大統領の伝記

今回は、村田晃嗣『レーガン』(中公新書、2011年)の紹介をします。

 

1.概要

第40代アメリカ合衆国大統領ロナルド・ウィルソン・レーガンの伝記です。

1911年にアイルランド系移民の比較的貧しい家庭に生まれたレーガンは、ハリウッド俳優を経て政治の世界に入り、アメリカ合衆国大統領になります。

大統領としてのレーガンは、保守主義の立場を採り、暗殺未遂に遭遇し、冷戦の終結に大きな役割を果たしました。

そして、2005年のインターネット調査で、レーガン元大統領は「最も偉大なアメリカ人」に選ばれています。

著者の村田氏は、同志社大学の法学部教授から学長になった研究者。

2.感想

(1)まさにアメリカン・ドリーム

レーガンは比較的貧しい家庭に生まれ、父親も酒に溺れていました。

決して恵まれた環境に育ったとは言えないレーガンが、大学時代も勤勉に働き、ラジオ局に就職し、持ち前の魅力で人脈を築きながらのし上がっていきます。

現在のアメリカにおける経済格差の大きな原因となった1人であると考えられているレーガンですが、本人は牧歌的な時代に育ち、アメリカン・ドリームとしか言いようのない出世を遂げています。

それだけに、レーガンには、後世のアメリカ人たちにもアメリカン・ドリームを信じて生きられる環境を残してあげて欲しかったなと思いました。

(2)コミュニケーション能力は当時から重要だった

レーガンが大統領にまで上り詰めることができたのは、抜群のコミュニケーション能力によるところが大きく、その巧みな演説等から「グレート・コミュニケーター」と呼ばれています。

レーガンの出世していく様をこの本で読む限り、やはり体制の中で出世していくには高度なコミュニケーション能力が重要で、50年以上前のアメリカでもそのことは変わらないようです。

最近になってコミュニケーション能力が発見され、注目されたというだけで、コミュニケーション能力の重要性は殊更に強調されるようなものではなく、当時から上流階級や政治的中心地では当然の前提であったようです。

現在の日本の「コミュニケーション地獄」ともいうべき状況は、そうした上流階級で出世するために必要な能力を、ごく普通の人にまで要求してしまっているからなのではないかと思いました。

(3)アメリカ市民も第二次世界大戦で苦しんだ

この本を読むまで、ぼくは第二次世界大戦時のアメリカは余裕で勝ったのだと思っていて、当時のアメリカ市民は、球場でコーラでも飲みながら遊んで暮らしていたのだと思っていました。

ところが、当時ハリウッド俳優としてそれなりの成功を収めていたレーガンでさえ、戦後のすさまじい重税に苦しんでおり、その経験がレーガンを減税と小さな政府を志向する保守主義者にしたわけです。

いわゆるセレブの生活さえ楽ではなかったわけですから、アメリカの庶民の暮らしも厳しかったことでしょう。

結局、戦争というのは武器を売る者や腐敗した軍人が一時的に得をするだけで、真の勝者などどこにもいないのだなと感じました。

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