あずみきし『死役所 9』|介護地獄の話が出てくる……。

今回は、あずみきし『死役所  9』(バンチコミックス、2017年)の紹介です。

 

1.あらすじ

この巻では、

・母親の介護地獄に陥った元介護士の話(「託す①・②」)

・娘を遺して病死した元女優の話(「遺すべきもの」)

・孤独感と劣等感で潰れた会社員の話(「自己判断」)

・脳卒中で突然死した保険外交員の話(「隠しごと」)

が収録されています。

 

2.感想

(1)介護地獄、個人に負担を押し付ける現状

「託す①・②」は介護地獄の話でしたが、今のところ、老人介護は家族に負担を押し付けることで成り立っているというのは、最近よく聞く話です。

自立して生活できない老人が国家や社会にとって負担にならないように、その家族を人柱のように犠牲にしているわけですが、保護責任者遺棄罪などの刑罰で威嚇し、半端な介護制度で搦めとることで今のところは何とかなっています。

ただ、おそらく、この状況もそろそろ続かなくなるでしょう。

ちなみに、今現在ぼくが一番恐れているのも、親が倒れて介護地獄化することです。

ぼくの場合、収入が無いですから、逃げるに逃げられないんですよね。

弟の負担で施設に入れるように主張するにも、紛争が深刻化すればするほど解決に金が必要でしょうし。

このお話をきっかけに先のことを考え、暗澹たる気持ちになりました。

(2)ひきこもり、どうなるのか?

ネタバレになってしまい申し訳ないのですが、「隠しごと」はひきこもり問題の話でした。

ひきこもりについては、実数すらも把握できていないのが現状で、支援をするといっても、誰もやりたがらないような劣悪な労働を押し付けようとしているだけです。

ただ、こちらも老人介護と同じで、現在は家庭の問題とすることで国家や自治体は負担を免れていますが、そろそろどうにもならなくなってきていますよね。

魅力のない人間に対する攻撃を煽る社会になってますし、ある時期からメディアは弱者ネタを玩具にしてきましたけれど、その中で堆積してきた「どうにもならない人たち」をこれからどうするつもりなのでしょうか。

ここまで偉そうなこと書いてますけど、おそらく、ぼく自身が統計的にはひきこもりとされる人間なんですよね。

体力もなく、自分で稼げるスキルもなく、底辺労働でいじめられるのも嫌だから家に居ようと思っている、そんな人間です。

正直、「このままではそのうち詰むよな」と理解していても、これ以上つらい思いをしても頑張るだけの精神的キャパシティが残っていないことを自覚してしまっていて、身動きが取れないというのが実情です。

この「隠しごと」というお話に出てくるような、ずっと部屋にいるとか、一切外出しないみたいな人はレアだと思いますけど、このお話が、ひきこもりの「これからどうすればいいんだろう?」という気持ちをはっきりさせてくれるのは確かかなと。

(3)全体には救いのある話が多いです

ここまで、珍しく自分の話まで交えつつ嫌な話をしてきましたけど、この巻は、この『死役所』というマンガにしてはマイルドな感じです。

というのも、何の救いもないのは上で話題にしている「隠しごと」くらいで、他の話の登場人物には、ほんのり救いがあるんですよね。

特に、「遺すべきもの」はなかなか良いお話だったと思います。

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