あずみきし『死役所 12』|生きていると、落とし穴に落ちてしまうこともある

今回は、あずみきし『死役所  12』(バンチコミックス、2018年)の紹介をします。

 

1.あらすじ

この巻に収録されているのは、

・病気で再就職先がなかなか見つからない女性の話(「かわいそうな人①・②」)

・どうして死役所に来たのかわからない小さな子供の話(「おててつないで」)

・小さな町で起きた爆弾事件の話(「夜ノ目町爆弾事件①・②」)

です。

 

2.感想

(1)全体に社会派

今回は、1冊丸ごと社会派な内容でした。

ネタバレになってしまいますが、「かわいそうな人①・②」は生活保護、「おててつないで」は虐待、「夜ノ目町爆弾事件①・②」は冤罪を扱っています。

この『死役所』という作品では、社会の問題を扱うことも時々ありますけれど、ここまではっきりと弱者寄りの立場から描かれたのは初めてじゃないかなぁと思って、少しびっくりしましたね。

モロに社会問題本を読んでみたりすることもあるぼくとしては、どちらかというと好みの内容ではあります。

ただ、実際にマンガとして出てくると、ありきたりな素材を選んだなぁなんて思ってしまいます。

(2)テーマは「理不尽な落とし穴」かなぁ

この巻のテーマは、人生の理不尽な落とし穴かなと思いました。

病気で失業してしまって再就職が上手くいかないことも、虐待されて死んでしまうことも、自白を強要されて無実の罪を着せられることも、本人にはどうしようもない不幸です。

そして、そんなどうしようもない、理不尽というほかない落とし穴が、人生にはたくさん口を開けているわけです。

そういった落とし穴を悉く意識して避けるというのは、ほぼ不可能と言ってよい難易度なわけだから、生活保護とか、児童相談所とか、公正な裁判といった社会のセーフティネットがとても重要なわけです。

ただ、そういったセーフティネットが穴だらけというか、取り上げられてるよね、というのがこの巻の『死役所』が描いたことだったかなぁと思います。

(3)いつも感じるモヤモヤ

この手の社会問題を扱った作品を読むたびにモヤモヤした何とも言えない気分になります。

それは、こうした社会問題をダシに娯楽作品を提供して儲けるマンガ家と、その娯楽作品を消費して楽しみを得る自分という構造に、無自覚でいられなくなってしまったから生じているのだろうなと思います。

おそらく、ぼく本人の状況が悪く、どことなく社会の状況も悪いように感じるから自覚してしまったのでしょうね。

自分が弱いと、娯楽作品も享受しにくくなります。

死役所12(BUNCH COMICS)

あずみきし『死役所』の紹介記事一覧