安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 22』|アムロとシャア、ガンダムとジオングの最終決戦

今回は、安彦良和ほか『機動戦士ガンダム  THE ORIGIN  22』(角川コミックス・エース、2011年)の紹介です。

 

1.あらすじ

ララァを失い、決定的敗北を決したシャアは、ギレンからジオングを受け取り、ガンダムとの最終決戦に臨みます。

シャアの乗るジオングの高火力と全周囲攻撃に苦戦しながらも、得意の精密射撃でガンダムに反撃させるアムロですが、果たして勝負の行方は……?

一方、連邦艦隊を打撃しつつア・バオア・クーに到着したキシリアは、父殺しの咎でギレンを抹殺し、クーデターを起こします。

そして、シャアを追いかけてア・バオア・クーに侵入したセイラは、ジオンの兵士に捕まってしまいますが、自らがアルテイシアであることを明かし、ジオンの兵を率いてキシリアに叛乱を起こすことになるのですが……。

2.感想

(1)キシリアの憎悪の理由は?

ここまで読んできた読者としては、キシリアがギレンを撃つシーンで、「ついにやったか、キシリア」なんて思ってしまいます。

ただ、物語中のキシリアの上の兄弟たちへの憎悪には疑問も感じるんですよね。

ザビ家が中心となるジオンの政争の中で、家のための暗部を担ってきたのがこのキシリアだったわけですが、その一方で、サスロを爆殺したことに始まって、キシリアはずっとザビ家の男たちを憎み、死に至らしめてきました。

確かに、サスロ暗殺の前にはサスロにキシリアがビンタされるシーンがありましたし、キシリアは物語中でギレンへの嫌悪をストレートに口に出してもいるのですが、なぜキシリアはこうもザビ家の男たちを憎むようになったのかという本質的原因については、特に描写がありません。

キシリアは長子ではなく、下から2番目ですから、ザビ家の後継者となるために上の兄弟たちが邪魔だっただけにしては、激しく憎み過ぎているように思いますし、キシリアがヒステリックな激情家であったというわけでもないんですよね。

(2)皮肉にもララァとの戦いがアムロを救った

アムロとシャア、ガンダムとジオングの最終決戦で、アムロはジオングの高火力と全周囲攻撃にガンダムを破壊されながらも対応するわけですが、アムロが一方的に穴だらけにされないで済んだのは、ララァの乗るエルメスとの交戦経験があったからだと思うんですよね。

もしも、シャアが連邦の戦艦やジムなどの戦力を削ることだけにララァを集中させてガンダムと交戦させていなければ、その後でシャアやニュータイプ兵士の乗るジオングに遭遇したアムロは、ガンダムではまともに戦えなかったはずです。

アムロは、ララァを殺してしまったことにショックを受け、ジオングとの交戦中にララァを戦場に引き込んだシャアを非難もしていました。

けれども、皮肉なことに、アムロは、ララァを殺したからこそ、高火力と全周囲攻撃能力を併せ持つジオングに対応することができたはずです。

(3)どうしようもないヤツに見えて大人なカイ

カイは、元々がダブりの不良ですし、ホワイトベースのクルーとなってからも、どこか拗ねているような、自分勝手でどうしようもない軟弱者として描かれてきました。

けれども、一方で、アムロやハヤトのように変に戦争に嵌まったり、軍隊に染まっていくわけでもなく、その時その時で自分で考えて行動しているとも言えます。

そして、終盤になってからは、誰かに支持されなければ動けないということもなく、自分で状況を判断して動くことができています。

現実でも、いわゆる優等生たちよりもチンピラの方が、意外と周りをよく見ていたり、世知に長けていたりしますから、カイというのはそういう部分を上手く描いたキャラクターかなと思いますね。

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