2019年01月11日執筆
こんにちは、尾崎すぐるです。
今日の1記事目は、心理系の本の記事です。
本田秀夫『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(SB新書、2018年)の概要と感想です。
1.概要
著者の本田氏は精神科医で、信州大学医学部教授。
1章と2章は、発達の特性には「重複」や「強弱」があり、発達の特性がASDとかADHDとか割り切れる場合ばかりではないという話。
3章以降は、発達の特性を理解し、環境調整を行うことで発達の特性によって生活に支障が出てしまうことを予防しようという話です。
2.感想
今までの一般向けに書かれた発達障害本と比べて、大きく異なるのは、ASDやADHDといった診断名が付くか微妙な、いわゆるグレーゾーンの部分のお話を中心に据えていることだと思います。
そして、発達の特性が「障害」になってしまわないように、発達の特性がある人が環境を調整するヒントを提供してくれていて、親切です。
発達に特性があって生きづらさを抱えている人は「やりたいこと」を生活の中心にという考え方や、「生産性は、人間の健康や幸福よりも優先されるべきものではない」(第4章「『やりたいこと』だけでは生きていけない場合は……」)という言葉は、発達に特性があって生きづらさを抱えている人を勇気づけるのではないでしょうか?
ただ、1つだけ疑問に思ったことを書いておくと、環境調整をするといっても、それ自体にある程度の能力が必要とされるのではないかと思うんですよね。
発達障害本を書くのは、基本的に、医師や成功者なので、なんというか、凡人の能力しかない発達の特性だけある人に環境調整なんてできるのかなと。
というのも、自分の努力で生活を改善するにもある程度の頭の良さが要求されますし、他人から譲歩を引き出して「変わり者」ポジションを確保するのは、ある程度有能な「使える」人間でないと難しいはずです。
特に、後者の他人に理解を求めて譲歩を引き出すのは、特別の優位性が無い人には厳しいんじゃないかと思うんですけどね。